『有吉の壁』に見る、芸人たちのポテンシャルとMCふたりの存在の大きさ

2020.6.3

ポテンシャルが最大限に引き出される「イジられ芸人」たち

パンサー尾形貴弘、とにかく明るい安村など、普段「イジられる」ことで輝きを増す芸人たちのポテンシャルが最大限に引き出されているのが『有吉の壁』のすごさ。普段はドッキリやスベリ芸といった「イジる側」主体の笑いばかりで彼ら自身のおもしろさがどうしても伝わりにくいが、『有吉の壁』は違う。誰にやらされるわけでもなく彼ら自身の「ウケたい」という意志のみで頭を剃り、裸になり、ビショビショになる。その姿はまさに「特攻」。0か100か。

「この仕事の後、どうなっても構わない」

そんな気概すら感じる彼らの生き様に「お笑い芸人」という職業の本質すら見えてくる。

『なりきりの壁』『流行語大賞の壁』のいい意味での「雑さ」

ほとんど即興でものまねショーを披露する「『なりきりの壁』を超えろ! ○○選手権」(○○は放送回によって変わる)はほかの番組では決してできないような雑で低クオリティのものまねが最高。ジャングルポケット斉藤慎二の三浦大知、三四郎・相田周二の上白石萌音、トム・ブラウンとパーパーほしのディスコのPerfume、かまいたち濱家隆一とダイアンのRADWIMPSなどなど、『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦』でやったら確実に苦情の嵐であろう悪ふざけのオンパレード、にもかかわらず絶妙に「ちょっとわかる」のラインを突いてくるのが本当におもしろい。

また、一世を風靡したチョコレートプラネットのTT兄弟を生み出した「『流行語大賞の壁』を超えろ! ブレイク芸人選手権」は芸人たちがさまざまなキャラクターに扮するもので、普段は何カ月も考えて稽古した完璧なネタを披露している芸人たちが、本当に1分で考えたような雑なネタを本気で披露しているギャップがたまらない。この雑さを味わえるのもこの番組の魅力だ。

4月に入ってレギュラー化されてからも番組のスタンスはほとんど変わることなく放送をつづけている。純粋なネタ番組、お笑い番組がほとんどなくなってしまった今、「ただ笑わせる」「ただ笑わせてくれる」この『有吉の壁』はお笑い芸人にとっても我々視聴者にとっても一番「優しい」番組なのだと思った。

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かんそう

1989年生まれ。ブログ「kansou」でお笑い、音楽、ドラマなど様々な「感想」を書いている。

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