新作映画撮影延期!監督激白コロナとZoomと表現欲

2020.4.22


ゲッターズ神!って思っていました

2020年、2月初頭。撮影や照明、アクション監督や美術、録音、衣装、助監督などなど、映画のスタッフがほぼほぼ決まりました。いろいろ奇跡的なタイミングがあって最高すぎるスタッフ陣となりました。以後も脚本を直したり、キャスト候補を考えたり、撮影プランなどを考えたり、とにかくまたいつ映画が撮れるかわからない、もしかしたらこれが最後になるかもしれない、たとえ最後でも自分がこんなにもやりたいオリジナル脚本をこんな最高な人たちと作れるなんて、すげえぜ!すげえ!さすが2020年!ゲッターズ神!って思っていました。新型コロナウイルスの話題は年始から少しずつ大きくなっていましたが、特にそのことについて深く考えることはしていませんでした。自分の映画とは特に関係のないことだと思っていました。

3月に入り、テレワークという言葉も頻繁に使われはじめ、大好きなプロレスの興行が中止になったりして、さすがに少し不安になってきました。これ以上コロナがひどいことになったりしないよね?と。これまで別の映画でクランクイン(撮影開始)3週間前に突然、お金が集まってないから中止!とか、原作者に嫌われて中止!ということなどがあったので不安でした。それでもやっと映画が撮れるぞ! という興奮がまだつづいていました。

でも、いつのころからか、桜が咲きはじめたころからか、さすがに5月に撮影するのは無理かもしれないと思いはじめました。5月にできなくてもいつかやれればいいかもしれない、けど、一度延期になったら何かが音を立てて崩れ、自分のほかの映画の中止のときのようにこれも中止になるのではないか。なぜか?それは、俺の映画だから!映画の神様は俺のこと嫌いなんだよ!ははははは!と不気味に笑った夜もあったかもしれません。でも、スタッフのみんなに会うととても心強く、各自が映画を少しでもよいものにしようと奮闘してくれていて、そんなスタッフの仕事がなくなるのはよくないし、監督である自分が不安がっていたらスタッフのみんなに失礼だと当時は自分勝手に思っていました。そんな不安をツイッターでは微妙に隠し切れていません。

桜の木の動画。実は動画を撮りながら変な歌を歌っています。少しずつ不安で頭が変になっていたのでしょうか。でもツイッターにつく動画は最初音声がオフになっているのでたぶんみんな歌には気づきませんでした。変な歌のことを誰もツッコんではくれませんでした。

ミニシアターを守りたい

そして4月7日、「緊急事態宣言」が出された日、映画の撮影延期が正式に決まりました。映画の撮影現場は「三密」だらけであり、何日か前には撮影は延期になるだろうと思っていました。キャストスタッフの仕事を守る以上に、キャストスタッフの(及びそこに関わるすべての人の)命の危機になるわけですから、命より大切なものがあるわけないし、俺は命かけて映画撮るんだぜ!なんて言葉は大嫌いです。たかが映画です。映画なんてどうでもいい。社会的にも個人的にも撮影なんてあり得ない状況でした。延期後の撮影日程も仮に決めましたし、そこで撮れなくても(そこではたぶん撮れない)、いつか撮れればよいし、自分の中では延期自体にショックはなく、プロデューサーが延期を決めてくれてホッとしました。でも、それでも妙に悲しいものがあり、何かが終わるような気がし、このまま一生撮影できないかもしれない、くそ!俺、終わったか!終わった?何が?そもそも映画って何よ?映画が好きなんだよ!好きって何?映画が何?などグルグル考えました。

ちょうどそんなときくらいに、自分よりひと回り年下の後輩の監督が、ミニシアターの危機に対して何か自分たちにできることはないかとメンバーを募り始め、私も誘われました(のちに「SAVE the CINEMA」運動へ発展)。俺、それどころじゃないから!なんていう自己中の気持ちが1ミリもなかったといえば嘘になります。でも、ちょっと前にミニシアターの危機に対していてもたってもいられず、以前お世話になったミニシアターのグッズを通販で買っていました。でもそれは純粋にミニシアターを救いたい気持ちがすべてではなく、映画の神様よ、俺に振り向いてくれ、俺はミニシアターのこと考えるから!お願い!という邪念がありました。ミニシアターのためというか、自分自身のため、自分自身の映画のため、です。それに比べ、純粋にミニシアターを想い、ミニシアターを救うことを大きな運動にしようとしている、自分に何かできないかとまっすぐにもがいている後輩の情熱をとても尊く感じました。
そして、以前撮った映画『くそガキの告白』を上映してくれて、一緒に闘ったり、笑ったり、悔しがったりしてくれたミニシアターで働く人たちのことを改めて想いました。そうすると、ミニシアターを守りたい、日本の映画文化を守りたいと、前よりも強く思えるようになりました。「SAVE the CINEMA」を積極的に広めようとしました。

これらのツイートを見るとわかるのですが、ミニシアターを守りたい、と言いつつ、同時に自分の中の表現欲を満たしたいと思っているところが徐々に見え隠れしています。気持ち悪いですね。特に最後の人形のやつなんかが顕著です。俺のトイ(おもちゃ)たちの中にひとつだけエッグ型のTENGAを混ぜて、それは大人のオモチャだろ!というツッコミを待っていましたが誰もツッコんではくれませんでした。

好きだった女子とZoom飲みしてみた


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