喫煙所が本番の“マトリ”芸人、さらば青春の光・森田哲矢



金にならないのに異常なサービス精神を見せる“マトリ”森田

ただ、森田自身も時々言うのだが、基本的にゴシップは金にならない。番組の本番中に言ったとしてもほぼほぼカットだし、下手したら多くの関係者から嫌われる可能性もあるので、芸人として損しかないのである。実際『勇者ああああ』でもピー音を入れずに放送した森田ゴシップは「さかなクン、実は魚より車のほうが好き」ぐらいなもんである。

熱海の温泉旅館にこもって徹夜で『ロックマン11』に挑戦するという企画のときもそうだった。睡魔が襲ってくる深夜の時間帯に刺激強めの森田ゴシップで出演者全員の目を覚ますという趣旨のコーナーがあったのだが、深夜1時から早朝4時までカメラを回したにも関わらず、使われたシーンはわずか2分ほどである。というのも企画の冒頭から森田はテレビでは言えないゴシップばかりをフルスロットルで言いつづけ、とにかく現場を荒らしまくった。

「大物アーティストの〇〇さんが近々逮捕されます。ちなみに俳優の〇〇さんは逮捕されたけど、なんとか揉み消しました……」

「若手実力派女優の〇〇さんが実は◯◯中毒らしいっすよ」

どこをどう編集しても放送できない業界事情を次々と実名で暴露する“マトリ”森田。オールカットになるのは承知の上、そこにあるのは「どんな手を使ってでもいいから現場を盛り上げたい」という異常なサービス精神だけである。芸能界の闇に切り込んではケタケタと高笑いを繰り返す森田の目はバッキバキで、それこそ見るからに「覚醒」していた。

「現場が楽しいから最悪全部カットでもいいっすわ!」と言いながらタバコ片手に爆笑を取りつづける“喫煙所の明石家さんま”に僕らはその日も太陽が昇るまでたっぷり笑わせてもらった。いるだけで現場が明るくなる番組きってのムードメーカーはこの日も大活躍だったわけである。

ちなみにこの日の収録素材は「めちゃくちゃおもしろいけど、さすがに流出したらヤバい」と言う理由でひととおり内容を確認した後で早々に消去し、各人が楽しい思い出として心の中に留めておくことになった。3時間にわたって語られた森田ゴシップの中で、唯一コンプライアンス的にOKだったものを挙げるとするならば

「東京03がネタ作りをしているデニーズに、梅宮辰夫がよくハンバーグを食べに来ていた」

という、もはやゴシップなのかどうかもわからない謎エピソードのみである。一応「森田さんこれって裏取ってます?」って確認したら「確かな情報筋から聞いたんで間違いないです」って言ってたからたぶん真実なんだろう。もちろん信じるか信じないかはあなた次第、だけど。


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板川侑右

(いたがわ・ゆうすけ)2008年テレビ東京入社。制作局で『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ』などのADを経て『ピラメキーノ』でディレクターデビュー。その後『ゴッドタン』『トーキョーライブ22時』などのディレクター業務を経て特番『ぽい図ん』で初演出を担当。過去に『モヤモヤさまぁ〜ず2』のディ..

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